
なぜ、ピラティスで、ボディメイクできると言えないのかを、運動生理学、解剖学、力学など、科学的視点で、パーソナルトレーナーおぜきとしあきが、説明していきます。
ピラティスは、もともとリハビリテーションを目的に開発されたエクササイズです。仰向け・座位など、重力を逃がす姿勢で行うことが多く、身体への負荷が極めて軽い。ここに、ボディメイクとしての決定的欠陥があります。
筋肉は「抗重力下」でこそ働き、育ちます。重力に抗って身体を支えるとき、筋肉は張力を発揮し、骨を正しい方向へ引き寄せる力が生まれる。しかし、寝姿勢やマット上での動作では、体重の多くが床面に逃げ、筋肉に支える張力が発生しない。動かしているようで、実際には「支えていない」のです。
結果として、筋肉の強弱バランスは変わらず、骨格関節角度もそのまま。つまり、どれだけ動かしても骨の関節角度は変わらず、外観シルエットも変わりません。ピラティスでボディメイク効果が出ないのは、この体型が理由です。
ピラティス創始者のジョセフ・ピラティス博士が設計したエクササイズ体系は、第一次世界大戦期のリハビリ目的から発展したもので、骨盤後傾(posterior pelvic tilt)タイプの身体体型を前提としています。
ピラティスの基本姿勢では、仰向けで「腰をマットに押しつける(腰椎を床につける)」という動作が多く見られます。これは、もともと骨盤が後傾しやすいヨーロッパ人の体型に合わせたリハビリ型の運動設計であり、腰椎の過伸展(反り腰)を抑える目的が中心です。ピラティス博士が想定していたのは、戦傷兵や虚弱体質者、長時間の座位で骨盤が後傾した体型の人々でした。
一方、現代日本人女性に多いのは骨盤前傾(anterior tilt)タイプです。このタイプに「腰をマットにつける」動作を繰り返すと、殿筋やハムストリングスが使われず、腹直筋ばかり優位になり、骨盤の前後バランスがさらに崩れます。その結果、反り腰や脚太りが悪化することもあります。
したがって、ピラティス博士の原典的プログラムは骨盤後傾体型を基準としたものであり、骨盤前傾タイプが多い日本人女性のボディメイクには体型的に不適合です。
現代のピラティス指導では「ニュートラルポジション(中間位)」を推奨する流派もありますが、基本体型は依然として後傾型。重力下で骨格関節角度を再構築するトレーニングにはならず、体型を変えるボディメイク効果は期待できません。
多くの人は、「筋肉を動かす=筋肉がつく」と誤解しています。しかしこれは、ボディメイクの世界では致命的な誤認です。
筋肉を増やすには、次の三条件を同時に満たさなければなりません。
ピラティスはこのうち、最も重要な「張力=負荷」が欠けています。軽い自重運動では筋繊維の破壊も起きず、再生に伴う成長反応も起きない。つまり、筋肉は動いているだけで、育っていないのです。
結果として、筋肉の強弱バランスが変わらず、骨格関節角度も動かない。筋肉を動かしても、張力が生まれなければ外観シルエットは変わりません。ここでも、ピラティスはボディメイクの要件を満たしていません。骨格は筋肉によって支えられいます。
筋肉量を増やすには、筋肉を動かすだけでは不十分です。筋肉を体型的に「成長」させるためには、物理的プロセスと化学的プロセスという二つの生理的反応が同時に起きる必要があります。どちらか一方が欠けても筋肥大は起こりません。
筋肉は、重力下で引き伸ばされながら収縮するときに肥大反応を起こします。これは「抗重力での物理的プロセス」と呼ばれます。
| ホルモン | 分泌条件 | 役割 |
|---|---|---|
| IGF-1 | 筋繊維が破壊されるほどの強収縮(特にネガティブ動作) | 筋同化を促進し、局所で筋肥大を引き起こす |
| FGF | 強いエキセントリック収縮で筋衛星細胞が活性化 | 新しい筋細胞の再生を促す(筋そのものから分泌) |
これらは血中ホルモンではなく、筋そのものから分泌される局在因子です。したがって、負荷が軽いピラティスではこのプロセスが十分に起きません。ピラティス中心ではボディメイクに必要な筋肥大が起こりにくいのです。
もう一つの要素は、筋内の低酸素環境と乳酸蓄積による化学的刺激です。
| ホルモン | 分泌条件 | 特徴 |
|---|---|---|
| 成長ホルモン | 筋内乳酸濃度の上昇、深い睡眠、特定アミノ酸の血中上昇 | IGF-1分泌を介して筋同化を補助 |
| テストステロン | 筋内老廃物(乳酸)蓄積に伴う内分泌反応 | 筋同化促進。ただし女性は男性の約1/20の分泌量 |
| カテコールアミン | 代謝物質の蓄積による交感神経刺激 | エネルギー動員と出力の向上を補助 |
この化学的プロセスは、強い張力と代謝ストレスがあって初めて発生します。ピラティスでは、筋内酸素環境が安定しており、乳酸の蓄積が少ないため、ホルモン反応が起きにくいのが実情です。結果、ピラティスでのボディメイクは限定的になります。
筋肉を増やすには、筋繊維に重力下での張力刺激(物理的)が加わり、同時に筋内代謝ストレス(化学的)が生じるという二条件が揃う必要があります。どちらか一方でも欠ければ、筋肉量は増えません。ピラティスは、両方とも欠けている──だから筋肉が増えないのです。
ボディラインを決めているのは、筋肉の大きさではなく「骨格関節角度」です。しかしその骨格関節角度を変える力を生むのは、筋肉の張力だけ。つまり、筋肉が育たなければ、骨格関節角度の位置関係は一切変わりません。
たとえば、骨盤の関節角度が前傾したままなら脚は太く見える、背中の関節角度が屈曲側に偏ればバストは下がる、肩の関節角度が前方に偏れば首が短く見える──これらはすべて筋力バランスの偏りによる骨格関節角度の歪みです。そしてそのバランスを修正するには、重力下で筋肉の張力バランスを再構築するしかありません。ピラティスのように寝た状態で身体を動かしても、骨格関節角度は何ひとつ変わらないのです。
だから、見た目も変わらない。外観のシルエットは、物理的に不変のままです。ピラティスだけでボディメイクを完結させるのは不可能に近いと言えます。
ピラティスを行うと「姿勢が良くなった気がする」「スッキリした」と感じる人は多いでしょう。それは、一時的な神経再起動と血流促進による感覚的変化にすぎません。
筋肉の緊張が和らぎ、可動域が広がると、身体が軽く感じる。しかしそれは、マッサージ後の爽快感と同じ現象です。翌日には重力下での筋バランスが元に戻り、骨格関節角度も以前のまま。つまり「整った気がする」だけで、「形は何も変わっていない」のです。ピラティスでのボディメイク効果が定着しない理由がここにあります。
私・おぜきとしあきが提唱するOZEKIボディメイクメソッドでは、すべての基礎を立位=抗重力下での骨格関節角度再構築に置いています。立って行うトレーニングこそが、筋肉を正しい方向に張らせ、骨格を引き直し、外観のラインを変える唯一の方法です。
ピラティスではこの「抗重力体型」が欠落しているため、いくら続けてもシルエットは変わりません。ピラティスは動作教育としては有用でも、ボディメイクの主役にはなり得ません。
ピラティスは「動かす運動」であって、「変える運動」ではありません。重力下の張力刺激がなければ、筋肉は育たず、骨格関節角度も変わらない。骨格関節角度が変わらなければ、外観のシルエットは物理的に不変です。
つまり、骨格関節角度は筋肉の強い方に引っ張られて決まる。ピラティスは負荷がなく、抗重力ではない。筋肉は動いてもつかない。よって骨格関節角度は変わらず、見た目も変わらない。結論として、ピラティスはボディメイクになりません。
ピラティスで“整った気”になるのは簡単です。しかし、“見た目が変わる”のは別次元です。
身体を変えるとは、立位・抗重力下で筋肉の張力バランスを再構築し、骨格関節角度を望ましい状態に作り直すこと。これこそが、真のボディメイクです。
ピラティスは「感覚のリセット」。ボディメイクは「形の再構築」。目的が違えば、方法も異なります。本当に身体を変えたいなら、動かすだけではなく、骨格関節角度を変えるためのバランスの整った筋肉を育てるべきです。