理想の体型を目指すため、ダイエットする人たちは年々増え、また入れ替わります。ダイエット市場には大きな需要があります。そいて、数多くのダイエット商品やダイエットサービスが登場しています。サプリメント、置き換えドリンク、エクササイズ器具、オンラインダイエットコーチング、パーソナルトレーニング、脂肪燃焼ウェア……。どれも魅力的な宣伝文句で、「これなら痩せられるかもしれない」と思わせてくれます。
しかし、こうした商品やサービスに“惚れ込み過ぎる”ことで、かえってダイエットに失敗してしまう人も少なくありません。それはなぜでしょうか? その背景と心理、そして本当に大切な視点について考えてみましょう。
1. 「物」に頼りすぎることで、自分の意識が置き去りになる
「このサプリを飲めば痩せる」「この器具で寝ながら運動できる」「このジムに通えば間違いない」。そう思って購入した商品やサービスが、結局ほとんど効果を感じられなかったという経験がある人も多いのではないでしょうか。
問題なのは、商品そのものではありません。多くのダイエット商品やサービスは、確かに一定の効果を持っています。しかし、それを“使いこなす”主体である自分の意思や習慣が変わっていなければ、どんなに優れた道具でも結果を出すことは難しいのです。
道具に「任せきり」になってしまうと、ダイエットの本質である「生活習慣の改善」という課題が後回しになります。結局、根本的な問題に向き合わないまま、「次の新しい商品」を探すことになり、消費と失敗を繰り返してしまいます。
2. 短期間で劇的に変わることを期待しすぎる
広告の多くは「短期間で効果が出る」とうたっています。「1週間でウエスト-5cm」「たった3日で-2kg」といったフレーズは、誰でも惹かれるものです。しかし、こうした謳い文句には、誤解を生む側面があります。
実際に、最初の数日で体重が落ちることはありますが、それは水分や胃腸の内容物が排出された結果に過ぎないことが多く、脂肪が本格的に減少するのはもっと長い時間をかけて行われるものです。
それでも「この商品を使えば一気に痩せる」と信じてしまうと、期待と現実のギャップに大きな失望を感じやすくなります。そして、「自分には向いていなかった」「やっぱり痩せられない」と諦めてしまう。これでは、せっかくの意欲も自信も失われてしまいます。
3. 過度な信仰が冷静な判断を妨げる
特定のダイエット法や商品、インフルエンサーに強く惚れ込むと、それ以外の方法や意見を受け入れにくくなることがあります。たとえば、極端な糖質制限を提唱するサービスを信じて、それ以外の栄養学的視点を一切無視してしまう。あるいは、「この先生の言うことだけが正しい」と思い込み、体調不良が起きても無理を続けてしまう。
このような“ダイエット信仰”とも言える状態は、自己判断力を低下させ、自分の体の声に耳を傾けることを忘れてしまう危険性があります。ダイエットにおいて大切なのは、「情報を鵜呑みにせず、自分の体と相談しながら選択する力」です。惚れ込みすぎることで、その視点を失ってしまうと、結果的に健康も損なうことになりかねません。
4. 買ったことで満足してしまう心理
人間には「買っただけで満足してしまう」という心理があります。高額なダイエット器具やプログラムを購入したことで、「これで自分は変われるはずだ」と感じて安心してしまい、実際の行動が伴わないままになってしまうことがあります。
また、「これだけお金をかけたのだから効果があるはずだ」と無意識に思い込み、冷静な振り返りができなくなることも。これは“サンクコスト効果”と呼ばれ、結果が出ていなくても「やめるにやめられない」状態に陥る原因となります。
5. 「自分の生活」を主役にしたダイエットを
ダイエットの本質は、「商品やサービスを使うこと」ではなく、「自分の生活と向き合い、習慣を改善していくこと」です。もちろん、適切なサポート商品やサービスを活用することは、成功への大きな助けになります。しかし、主役は常に「自分」でなければなりません。
商品やプログラムに惚れ込む前に、「これは自分の生活リズムに合っているか?」「無理なく続けられるか?」「自分の体はどんな状態にあるのか?」という問いを持つことが大切です。